定規に穴を空けて150万円稼いだ人達-クラウドファンディングで資金調達に成功

 クラウドファンディングサイトには数えきれないほどのプロジェクトが掲載されています。成功するプロジェクトがあれば不運にも失敗するプロジェクトも当然存在します。長く観察すると失敗するプロジェクトには共通点が見受けられることに気づくでしょう。多くの場合こんな特徴があります。
・地味で目立たないアイデア。
・車輪の再発明(既に存在する技術・アイデアを再び創出すること)をしている。
・リワード(返礼品)に対して支援金額が高い。
しかしどんなことにも例外が存在するようで、上の3つの悪条件をすべて満たしているのにも関わらず150万円もの支援金を獲得出来たプロジェクトを見つけたのでご紹介します。

Φ-Ruler

 このプロジェクトが開発しているのはΦ-Rulerと名付けられた定規で、見ての通り穴が何か所か開けられている以外は何の変哲もないものです。しかし何点か穴を開けただけで定規の使い道を広げることに成功しました。穴に鉛筆を挿して軸にすることでコンパスのように円を描いたり、長穴で目印を書いて垂直交差する線を描く時のガイドにしたりと、定規一本で様々な図形を描くことが出来るようになります。製図やイラスト、ペーパークラフトが趣味の方にとって魅力的な文房具となることでしょう。

 しかし、このプロジェクトの支援金額を見てしまうと支援するのを思わずためらってしまいます。最低でも40$と高額に設定されています。

定規に40$(4400円)のお金を払いたいと思うでしょうか。Amazonで検索すると穴の開いた定規がわずか400円あまりで見つかります。

私はこのプロジェクトは恐らく支援金不足で失敗に終わるだろうと予想していたのですが、予想とは裏腹に成功を収めたので驚いています。上で述べたようにこれは
「定規に穴を空けるという地味なアイデア」で「すでに400円で市販」されていて「1つ入手するのに40$(4400円)」もの支援金が必要な、失敗する要素だらけのプロジェクトだからです。魅力的で現実味のあるプロジェクトでさえ失敗する事例があるのに良くも集まったものだなと感心した次第です。

なぜ成功できたのか?

このプロジェクトが奇しくも成功を収めた要因を考えます。私はマーケティングは専門外なので話半分に聞いて下さい。

1.分母が大きい
 このプロジェクトが掲載されたのはKickstarterという老舗のクラウドファンディングサイトです。日本ではCampfireやMakuakeなどのサイトがメジャーですがそれらのサイトを閲覧してプロジェクトに支援するのは必然的に日本人になります。一方でKickstarterは英語で書かれたサイトなので全世界から資金を調達することができます。参考としてクラウドファンディングの市場規模を比較したサイトを参照しますと、日本の市場規模が477億円なのに対して、アメリカだけで1兆円以上の規模があることが読み取れます。そのため支援金が集まりやすい環境だと言えます。

2.外見で差別化出来ている
  Φ-Ruler は無垢の真鍮で出来ていて高級感のある外見をしています。製図用のシャーペンや万年筆など文房具の中には高い質感が求められるものも存在します。プラスチックやステンで出来た定規は見かけますが真鍮製の高級感のあるものは見かけませんので、上質な文房具を求める人の物欲を刺激出来たのかもしれません。

3.プロモーションの仕方
 プロジェクトの主催者は「バウハウスやMoMA(ニューヨーク近代美術館)の作品にインスパイアされてこの定規をデザインした」と説明しています。このプロジェクトに興味をもつのは主に芸術に造詣の深い方が多いでしょうから、そういう人たちの心に刺さるのではないかと思います。実用品にはコスパの概念が付き纏いますが芸術作品にコスパは求められません。この定規に芸術的な要素を見出した一部の人が支援してくれた可能性があります。

成功した理由は定かではありませんが、いずれにしろ地味でリワードのコスパが悪いプロジェクトでも成功することがあるというのはクラウドファンディングで資金調達を目指す人にとっては朗報と言えます。

 

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