73万円で買える?電気自動車:3Dプリンターで製造

 3Dプリンターの性能が高まるにつれて活躍の場も増えています。黎明期の3Dプリンターは造形が荒く強度も低かったので実用的なものを作るのが難しかったのが、現在では航空機のエンジン部品から補聴器やインプラントと言った医療器具の製造にまで使用されるようになっています。
3Dプリンターは一般的には精密な部品を製造するのに向いていると言われますが、自動車を作ってしまおうという冒険的なプロジェクトを発見したのでご紹介します。

XEV YOYO | 3D Printed Electric Car

こちらが73万円(2020/1のレート)で購入できる電気自動車です。この自動車はクラウドファンディングで開発資金を調達を図っています。開発プロジェクトに5999ユーロの支援金を出すと返礼品として納車されるそうです。現時点では市販はされていませんが、試作車をイタリアのモーターショーに出展した実績があります。

 

5999ユーロで納車されるのは最安のモデルで、車の材質にPLA樹脂が使用されています。+1000ユーロ出すとカーボン樹脂のモデルが手に入ります。 
車を3Dプリンターなんかで作って大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、3Dプリンターで製造するのはボディの外板と内装部分で、強度が必要なシャシー部分は鋼材を使用しています。そして衝突時の安全を確保するために前面と側面にインパクトビームを備えています。

 車のボディを樹脂で作る手法は今に始まったことではなく1950年代からイギリスのロータスなどが用いてきました。鋼板のフレームにFRPのボディをかぶせて製造する方法により、軽くそして安く車を製造することが出来ます。下の画像のロータス・エリートがこの手法で作られ成功を収め、ロータスの出世作となりました。

Lotus-Elite-'60.jpg

 ロータスは金型にFRPを流し込んで製造していましたが、品質管理が難しくボディの厚みが均一でなかったり、歪みや割れが生じるようなトラブルに悩まされたという逸話もあります。3Dプリンターでどこまでの品質が確保できるのか気になるところです。 製造する様子がプロモーションビデオに写っていましたが熱溶解積層方式のプリンターを使用しているように見受けられました。この方式のプリンターで大きなパーツを造形しようとすると熱で歪みが発生する恐れがあります。

 さて、この車のデザインですがカッコ悪くはないもののどこかで見たような印象を受けます。観察すると他メーカーのデザインと似ている点が散見されます。例えばリアウィンドーとテールライトはフォルクスワーゲンのUp!に似ていますし、側面のドアの形状はルノーの電気自動車のtwinzyに似ているように見えます。もう少しオリジナリティが欲しいところですね。

思わず低コストを実現するためにデザイナーの給料をケチったのではないかと邪推してしまいました。

 次にこの車のスペックを見ていきましょう。乗車定員は2人で、航続距離は130km,最高速度は70km/hとなっています。カタログスペックに記載される航続距離というものは殆どの場合当てにならないので実際は6から7割程度が妥当でしょう。つまり多くても90km程になります。スペックが控えめなのは都市部での短距離移動を目的に開発されたからです。通勤や買い出しに使う足車として割り切れば実用になるかと思われます。

充電に時間がかかるのが電気自動車の大きな欠点ですがこの車は画期的な手法を取り入れています。車からバッテリーを簡単に抜き差しできるよう設計されているので消耗したバッテリーを充電済みのバッテリーにスムーズに交換することが出来ます。リアバンパーが蓋になっていてそこを開いてバッテリーを入れ替えるだけで充電完了です。中国では電気自動車のバッテリーをスタンドで交換する仕組みが実用化されているのでそれに倣ったのかもしれません。

 73万円で新車の電気自動車が買えるというのは魅力的に思えますが、高速に乗れず遠出も出来ない車にこれだけの金額を払う気になるかと言われると微妙です。しかし軽自動車が存在しないヨーロッパ(この車の開発拠点はイタリア)では商機が見込めるかもしれません。このプロジェクトは6000万円の支援金を集めることを目標としていますが現在1100万円ほど集まっています。興味のある方は支援してみてはいかがでしょうか?

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