安い3Dプリンターの工作精度を上げる方法

3Dプリンター元年と呼ばれた2013年以降、3Dプリンターの市場は膨張しそれによって気軽に購入できる価格帯の機種も多数登場しました。今では数万円出せばホビー用の3Dプリンターを入手することが出来ます。
 しかしユーザーが増えるにつれて不満や頻繁に発生するトラブルも多く耳に入るようになりました。例えば大きなパーツを出力すると熱収縮によって造形物に歪みが生じてしまう問題や、印刷途中でフィラメントが絡まってしまい造形に失敗するトラブルです。これらの問題は造形物の充填率を変えてみたり、絡まりにくいフィラメントの銘柄を使用することによってある程度は解決できるのですが、ユーザーの工夫ではどうしようもできない問題がいくつか残っています。特に2つの問題が深刻です。

1.印刷途中でノズルがズレて、造形品に段差が生じてしまう

 印刷途中で何らかの外乱、例えばステッピングモーターの脱調やボールねじのバックラッシュ、3Dプリンターに物が当たったことなどが原因でノズルが本来の位置からずれてしまい、それによって造形品に段差が生じるトラブルです。業務用の3Dプリンターはフィードバック制御で動くサーボモーターでノズルを駆動させているのですが、安価な3Dプリンターはステッピングモーターを搭載していて、目標位置までのパルス数を計算してその数だけパルスをモーターに送ることでノズルの位置を制御しているため、外乱が加わっても修正されずにズレが蓄積してしまいます。

2.造形精度が荒い

 黎明期と比べて高精度になったとはいえホビー用の3Dプリンターは造形精度が荒いと感じられることもあるでしょう。DMM.makeなどの数百万円する業務用プリンターを使用した出力サービスに造形を依頼すると、肉眼では積層ピッチが見えないくらいの精度で造形してもらえますが、残念ながらホビー用ではそこまでの精細さは望めません。ユーザーの中には印刷後に表面をアセトンなどの有機溶剤で拭いて表面のギザギザを消したりする方もおられます。オブジェとして出力したものなら質感が向上するので試す価値はありますが、アセトンで拭いても造形物の精度が上がることはないので 何かのパーツとして出力した場合は無意味だと言わざるを得ません。

上の画像でも造形品の表面に木の年輪のような模様が出来てしまっていることが確認できます。

 1.2.のようなホビー用3Dプリンターに付き纏う不満を解消するには造形中に外乱でノズルがズレても正しい位置に復帰することと、より正確な位置決めが可能になることが不可欠だと言えます。

Ananas Stepper 3.0

そんな悩みを解決するためにはステッピングモーターをより高精度で外乱に強いモーターに載せ替える方法が有効です現在クラウドファンディングを利用して開発が進められているAnanas Stepper3.0モーターは有効な解決策となり得るでしょう。

特徴

このモーターは3Dプリンターやロボットアームに取り付ける為に開発されたもので、普及価格帯の製品に使われるモーターよりも高精度で0.01°の回転角単位で制御(つまり36000step/rev)することが可能となっています。そしてモーターの脱調に対処するためフィードバック制御されています。そのお陰で造形物の精度が向上し、印刷に失敗する確率も減らせます。下の画像の通り木の年輪のような模様の部分がツルツルになり細部の造形がより精細に出来ていることが見て取れます。

そしてフィードバック制御より印刷中に手で軸を動かしても元の位置に戻ってくれています。この差は大きく従来のモーターではズレを修正出来ないまま印刷を続けてしまうので悲惨なことになっていますが、Ananas Stepperはきちんと正しい位置に復帰して何事もなかったかのようにきれいに印刷できています。

何よりも嬉しい特徴が、既存ののモーターと同じサイズに出来ているので簡単に交換出来ることです。取付寸法が異なる場合は自分で穴を開ける必要があったり、場合によってはブラケットを自作する羽目になることもありますのでポン付け出来るのは魅力的に思います。そしてモーターの背面には様々な規格のコネクタが実装されているので機種に関わらず取り付けることが可能です。

スペック比較

エントリークラスの3Dプリンターに使用されるモーターとの比較表です。5万円以下の機種ではuStepperが多く使われているようです。表を見る限りでは最廉価の機種でありながら精度は2番目に高く、様々なプラットフォームに対応していることが読み取れます。

廉価版の3Dプリンターをお持ちの方は検討してみる価値があると思います。

AnanasStepper 3.0, A Servo Stepper for Multi-Axis Control

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